米国債(アメリカ国債)は買ってはいけない?やめとけと言われる理由やメリット・デメリット・おすすめの運用方法を解説

米国債は世界最大の信用力を持つアメリカ合衆国が発行する債券であり、「世界で最も安全な資産」の一つとして広く認知されています。しかし、その安全性の高さとは裏腹に「買ってはいけない」という意見も存在します。本稿では、米国債の基本的な特徴からメリット・デメリット、具体的な投資方法まで徹底解説します。安定した利回りと信用力の高さを求める投資家にとっての魅力と、金利変動や為替リスクといった注意すべき要素を理解し、あなたの資産形成に役立つ判断材料を提供します。

米国債(アメリカ国債)とはどんな債券?

米国債(アメリカ国債)とは、アメリカ合衆国の財務省が資金調達のために発行する債券のことです。米国政府が債券の元本(償還額)と利息(クーポン)の支払いを保証しており、信用度は極めて高く、事実上世界で最も安全な資産の一つと見なされています。安全性の高さから、個人投資家の資産運用先としてだけでなく、各国の中央銀行が外貨準備として保有するケースも多いです。また、米国債市場は世界最大規模で流動性も高く、必要なときに売買しやすいという特徴があります。

なぜ米国債は人気があるのか?

米国債が人気を集める理由の一つは、その安定性と信頼性です。経済や市場に不安が生じた局面では「安全な避難先」として世界中から資金が集まりやすく、資産保全の手段として注目されます。さらに、日本の国債と比べると米国債の利回りは相対的に高い傾向にあり、低金利の日本では得られない利息収入を期待できる点も魅力です。例えば、日本国債の利回りが0.5%前後に留まる一方で、米国債は期間にもよりますが数%の利回りが見込める場合があります。

このように「高い信用力による安全性」と「比較的良好な利回り」を兼ね備えていることが、米国債が世界中の投資家に支持される理由です。

米国債(アメリカ国債)は買ってはいけないと言われる5つの理由とは?

一部では「米国債は買ってはいけない」「やめておけ」といった声が聞かれることがあります。これは米国債自体に問題があるというよりも、投資環境やリスク要因に対する懸念から出てくる意見です。

  • 金利上昇リスクと価格変動
  • 為替リスク(円高時の影響)がある
  • インフレリスクに弱い
  • 利回りの低さと投資効率
  • 信用リスク(デフォルトリスクはあるのか?)

ここでは、そうした懸念の代表例となる5つのリスク要因について解説します。

① 金利上昇リスクと価格変動

特に償還までの期間が長い債券(長期債)ほど金利変動の影響を大きく受け、価格の変動幅が大きくなります。例えば、低い利率で発行された10年物の米国債は、市中金利が急上昇した場合に価格が大きく下落し、額面を下回る可能性があります。このように金利上昇局面では元本割れ(購入時より価格が下がる)リスクがあるため、米国債は「買ってはいけない」と言われる理由の一つとなっています。債券の価格は市場金利の変動と逆の動きをします。金利が上昇すると、既発債券の価格は下落し、金利が低下すると価格は上昇します。

② 為替リスク(円高時の影響)

為替相場は日々変動するため、投資期間中に円高(ドル安)が進むと、為替差損によって円建ての資産価値が目減りするリスクがあります。例えば購入時に1ドル=150円だったものが、償還時に1ドル=140円になってしまうと約7%の円高です。この場合、年間利息で5%を得ていても為替差損がそれを上回り、円ベースでは元本割れになる可能性があります。実際、過去には1年間で15%以上も円高が進んだ局面(例:2015年~2016年)もあり、その際に米国債の利回り(当時約2%)では為替損失をカバーできなかった例があります。このように為替変動次第では利息収入が相殺され、円ベースで損失が出るリスクがあるため、米国債投資には注意が必要です。

米国債は米ドル建ての金融商品です。そのため日本の投資家が米国債に投資する際は、円をドルに両替して購入し、償還時や売却時にはドルを円に戻す必要があります

③ インフレリスクに弱い

インフレ率が利回りを上回ると購買力ベースで資産価値はマイナス方向に向かうため、特にインフレが加速する局面では債券投資全般が不利になります。米国債の利回りは平時において物価上昇率を上回る水準で推移することが多いものの、予期せぬ高インフレ(例えばパンデミック後の供給混乱など)の際には利回りを凌駕するインフレが起きる可能性もあります。このため、インフレに弱いという点も米国債のデメリットとして認識され、「買ってはいけない」と言われる理由になっています。

米国債の利息は基本的に固定されています。そのため、インフレ(物価上昇)局面では、実質的な利益が目減りする恐れがあります。仮に年間利回り4%の米国債に投資していても、同じ期間に物価が4%上昇してしまえば、実質的には利益が±0になってしまうからです

④ 利回りの低さと投資効率

たとえば、株式やリスクの高い投資信託であれば年率10%以上のリターンを狙える可能性がありますが、米国債の利回りは直近では年4~5%程度にとどまります。さらに前述の為替リスクによって円高になれば、その実質利回りはさらに低下してしまいます。したがって資産を大きく増やしたい投資家にとっては、米国債はリターンが物足りない投資先と映るかもしれません。限られた資金を運用する上で、より高い成長が見込める投資対象と比較すると投資効率が低いと判断され、「積極的に買うほどではない」という声につながるのです。

米国債は安全性が高い半面、その利回り(リターン水準)は株式など他の投資対象に比べると低めです

⑤ 信用リスク(デフォルトリスクはあるのか?)

歴史的に見ると、国債であっても経済状況次第ではデフォルト(債務不履行)に陥る例があり、近年でもアルゼンチンやスリランカなど一部の国が国債のデフォルトに至っています。

しかし、米国債の場合は米国政府が支払いを保証しており、過去に一度も債務不履行に陥ったことはありません**。**

米国は世界最大の経済規模と信用力を背景に、格付会社からも最上位級の評価(ムーディーズ:Aaa、S&P:AA+など)を受けています。理論上リスクはゼロではないものの、米国が経済的に破綻する可能性は非常に低く、デフォルトリスクは無視できるほど小さいと考えられます。

ただし近年では、米国の財政赤字拡大や議会の債務上限問題を受けて一部格付機関が米国債の格付け見通しを引き下げる動きもありました。2023年には米国債の信用格付けが最上位の「AAA」から「AA+」に引き下げられる出来事もあり、政治的な対立がデフォルトリスクを高める懸念が指摘されています。

このように極めて信頼性が高い米国債とはいえども過信は禁物であり、政治・経済状況によっては信用リスクに注意を払う必要があります。

一般に債券には、発行体の財政悪化によって利払い・償還が滞る信用リスク(債務不履行リスク)が存在します以上のような理由から、「米国債は買ってはいけない」との指摘がなされることがあります。

要約すると、市場金利の変動による価格リスク、為替の変動リスク、インフレによる目減りリスク、リターンの低さ、そして信用リスクといった点が懸念材料となり得るのです。ただし、これらは米国債に限らず債券投資全般に共通するリスクでもあります。米国債そのものが特別に危険というわけではなく、投資する際にこうしたデメリットも理解しておくべきだという意味合いで捉えるとよいでしょう。

米国債(アメリカ国債)のメリットとデメリット

ここまで米国債のリスクや懸念点を見てきましたが、一方で米国債には魅力やメリットも多数あります。安全性や安定性を重視する投資家にとっては、有力な選択肢となり得る金融商品です。この章では、米国債の主なメリットとデメリットを整理して解説します。

米国債(アメリカ国債)の主なメリット

米国債(アメリカ国債)には以下のようなメリットがあります。

  • 高い安全性と信用力
  • 利回りの安定性(定期的な利息収入)
  • 分散投資効果(ポートフォリオの安定化)
  • 高い流動性と少額からの投資が可能
  • 為替差益の可能性

高い安全性と信用力

米国債最大のメリットは、その信用リスクの低さです。米国政府が元本と利息を保証しているためデフォルト(債務不履行)となる可能性が極めて低く、安心して資金を預けられます。世界最大の経済規模を持つ米国の信用が裏付けとなっており、格付けも最上位級です。言い換えれば、貸し倒れリスクがほとんどない「堅実な投資先」として信頼されています。

利回りの安定性(定期的な利息収入)

米国債は購入後、満期まで保有すれば額面100%で償還される仕組みのため、途中で売却しない限り元本が目減りする心配はありません。また利付債であれば半年ごとに定期的な利息(クーポン)が支払われるため、安定した収入源となります。市場価格は日々変動しますが、株式の配当金や価格変動に比べると債券利息ははるかに予測しやすく一定です。特に満期まで保有する場合、ドル建てでは元本と利息が確実に受け取れるので、計画的な資産運用が可能です。この安定性は、リスクをあまり取りたくない投資家や老後の資産運用で安全第一の方にとって大きな魅力となります。

分散投資効果(ポートフォリオの安定化)

米国債は日本株式や不動産など他の資産との価格の相関が比較的低いとされています。そのため、ポートフォリオに組み入れることでリスク分散の効果が高まり、資産全体の価格変動を抑えることができます。例えば株式市場が不調なときでも、安全資産である米国債が値下がり幅を抑えてポートフォリオ全体の安定に寄与するといったケースがあります。特に日本国内だけで運用している場合、資産の地域的な偏りがありますが、米国債のような海外資産を加えることで地理的・通貨的な分散効果も得られます。つまり、米国債への投資は「安全装置」や「緩衝材」として機能し、全体のリスクを低減してくれるのです。

高い流動性と少額からの投資が可能

米国債市場は世界最大で取引参加者も多く、債券の流動性(売買のしやすさ)が非常に高いです。いざ資金が必要になった際にも市場で比較的容易に売却できるため、現金化しやすいという利点があります。また日本の証券会社を通じて購入する場合、比較的少額から投資を始められる点も初心者にはメリットです。たとえばネット証券各社では1口あたり100ドル単位(約1万5千円~)で米国債を買えるところもあり、数万円程度の資金からでも米国債投資にチャレンジできます。これは不動産投資などと比べて遥かに敷居が低く、誰でも手が届きやすい投資対象と言えます。

為替差益の可能性

前述の為替リスクとは裏表の関係ですが、米国債投資では円安方向に為替が動いた場合に為替差益を得られる可能性もあります。購入時よりも円安(ドル高)になれば、ドル建てで受け取る元本・利息を円転した際に円ベースのリターンが増加します。例えば1ドル=120円で購入し、償還時に1ドル=130円になっていれば、為替差益だけで約8%のプラスとなり、利息と合わせて大きな利益になります。このように、為替の動向次第では付加的なリターンを得られる点はメリットと言えるでしょう。ただし為替予測は難しく、あくまで副次的な要素であることは念頭に置く必要があります。

米国債(アメリカ国債)の主なデメリット

米国債には「堅実さゆえの弱点」とも言えるデメリットが存在します。

米国債のデメリット例

  • リターン(水準)の低さ
  • インフレに弱い
  • 金利変動による価格リスク
  • 為替変動リスク
  • 流動性リスク(中途換金時の注意)

従ってメリット・デメリットの両面を理解した上で、自分の投資目的に合致するか検討することが重要です

リターン(水準)の低さ

米国債は安全性と引き換えにリターンが抑えめです。他のリスク資産と比べ大きな値上がり益は期待しにくいため、資産を大きく成長させたいという目的には適していません。特に若年層で長期の資産形成を目指す場合、株式や成長資産のほうがリターンは高くなる傾向があるため、米国債だけでは物足りない可能性があります。

インフレに弱い

インフレ局面では、実質利回りが低下してしまう点は大きなデメリットです。インフレが高進すると、せっかく得た利息が物価上昇によって相殺・目減りし、資産の購買力は下がってしまいます。極端なインフレでは元本自体の実質価値も目減りするため、固定金利である通常の米国債はインフレ耐性が低いといえます。

金利変動による価格リスク

市場金利の変化により債券価格が上下するリスクは常に付きまといます。特に金利上昇局面では債券価格が下落し、途中売却すれば損失が出る可能性があります。満期まで保有すれば額面で戻ってくるとはいえ、長期債を保有中に金利が上がると評価額が大きく下がり心理的な負担になることもあります。金利動向次第で評価損が膨らむリスクはデメリットと言えるでしょう。

為替変動リスク

日本の投資家にとって、米国債投資は常に為替リスクと背中合わせです。円高になれば利回りが目減りし、場合によっては損失に転じる点は無視できません。為替相場の予測は専門家でも困難であり、自分ではコントロールできない外部要因によってリターンが変動してしまうのはデメリットです。

流動性リスク(中途換金時の注意)

米国債自体は流動性が高いものの、市場環境によっては希望するタイミングで満足な価格で売れない場合も考えられます。例えばリーマンショック級の金融危機時には市場機能が低下し、一時的に債券の買い手が減少することがありえます。そのような極端な状況下では、本来安全な米国債でも一時的に思うような価格で売却できないリスクがゼロではありません。ただし平常時においては米国債の流動性は非常に高いため、通常の市況では大きな問題になりにくいでしょう。

米国債(アメリカ国債)への投資方法

米国債への投資にはいくつかの方法があります。大きく分けると、個別の債券そのものを購入する方法と、投資信託やETFを通じて間接的に投資する方法があります。それぞれに特徴があるため、初心者の方は自分に合ったやり方を選ぶと良いでしょう。この章では代表的な投資手段と、その選び方のポイントを解説します。

個別債券の購入方法(直接購入・証券会社経由)

個人が米国債を直接保有するには、主に証券会社を通じて購入する方法が一般的です。日本の証券会社(ネット証券や大手証券)では、外国債券として米国債を取り扱っており、必要な手続きを経て円貨を米ドルに交換したうえで買い付けます。購入方法には、新規発行される債券を買う「新発債の購入」と、既に市場に出回っている債券を買う「既発債の購入」があります。初心者には市場に流通している既発債を証券会社経由で購入する方法が手軽でしょう。証券会社の口座からインターネット上で注文でき、購入単位も100ドル程度から可能なところが多く(例えば楽天証券・SBI証券では100ドル単位~、野村證券やマネックス証券では1,000ドル単位~等)、少額から米国債を始められます。

購入時には為替手数料や債券の売買手数料がかかる場合があるため、各社の費用体系を確認しましょう。また、債券を購入した後は、原則として満期まで保有すれば額面金額が戻ってきて利息も受け取れます。途中で売却することも可能ですが、その際の価格は市場金利や残存期間によって変動する点に注意が必要です。

ETFを活用した投資(代表的なETFの例)

ETF(上場投資信託)を利用すれば、より手軽に米国債へ分散投資することができます。米国債ETFとは、複数の米国債にまとめて投資できる投資信託が証券取引所に上場し、株式と同様にリアルタイムで売買できるようにした商品です。

ETFを使うメリットは、小口の資金で複数の債券に分散投資できることと、市場価格でいつでも売買できる流動性です。また運用の手間も省け、利払いの管理などもファンドが代行します。代表的な米国債ETFの例として、米国市場に上場しているものでは「

iシェアーズ 米国国債20年超 ETF(ティッカー: TLT)」や「iシェアーズ 米国国債7-10年 ETF(ティッカー: IEF)」などが挙げられます。TLTは米国の長期国債(残存期間20年以上)に投資するETFで、長期債ならではの高めの利回りと価格変動リスクを持ちます。

一方、IEFは中期(7~10年)国債に分散投資するETFで、適度な利回りと比較的マイルドな価格変動特性があります。日本国内の証券会社でもこれら米国ETFを買付けることが可能です。また、東京証券取引所にも米国債に連動するETFが上場されています。

例えば「MAXIS米国国債20年超上場投信(為替ヘッジあり)」のように、為替リスクを円ヘッジした長期米国債ETFや、グローバルX社の「超短期米国債ETF」など、投資家のニーズに合わせた商品が選べます。ETFであれば国内株式と同じ感覚で取引できるため、初心者でも比較的理解しやすいでしょう。

ただしETFにも信託報酬(運用コスト)がかかる点や、市場価格が基準価値から乖離する場合がある点には注意が必要です。

短期債 vs 長期債の選び方

米国債には償還までの期間によって短期債・中期債・長期債といった種類があります(例:1年未満は短期国債、10年物は中期国債、30年物は長期国債)。

短期債は残存期間が短い分、利回りは低めですが金利変動による価格リスクが小さいという特徴があります。満期までの期間が短いほど将来金利の不確実性が少ないため、市場金利が上昇しても価格下落の幅が限定的で、元本価値が安定しやすい利点があります。

一方、長期債は残存期間が長い分、一般的に利回りは高く設定されますが、その代わり金利変動の影響を大きく受けるという面があります。金利が上昇すれば長期債の価格は大きく下落し、逆に金利が低下すれば大きく上昇します。そのため長期債投資は高い利息収入を得られる反面、価格変動リスクが高いと言えます。

選び方のポイントとしては、まず運用期間の目標を考えましょう。近い将来に使う予定の資金であれば短期債を中心にして安全性を重視し、長期に渡って運用できる余裕資金であれば利回りの高い長期債も検討します。また、金利動向の予想も選択に影響します。今後金利上昇が見込まれる局面では短期債で様子を見るほうが無難ですし、金利がピークに近いと判断するなら長期債で高利回りをロックインするといった戦略も考えられます。初心者の場合、極端に長短どちらかに偏らせず、中期債を含めてバランスよく保有することで、大きな機会損失やリスク偏重を避けるのも一策です。

米国債(アメリカ国債)の利回りと価格変動の関係

債券投資では「利回り(Yield)と価格(Price)の関係」を理解することが重要です。一般に債券価格が上昇すると利回りは低下し、価格が下落すると利回りは上昇します。これは、債券のクーポン(金利)が固定されているため、市場で債券が高く買われる(価格上昇)と同じ利息額でも投資効率が悪くなる(利回り低下)という逆相関の関係にあるからです。反対に、何らかの理由で市場価格が下がれば、その債券を安く買った人にとっては額面どおりの利息を受け取った際の利回りは高くなります。このシーソーのような関係により、債券の市場利回り(水準)は日々変動しています。実務上、よく使われる指標に「利回り曲線(イールドカーブ)」があります。

これは残存期間ごとの国債利回りを線で結んだもので、経済情勢によって形状が変化します。例えば景気が好調で将来の利上げが見込まれるときは長期ほど高い利回りとなり、利回り曲線は右上がりになります。一方、景気後退懸念が強いと短期金利を下げる政策が取られるため、長短で逆転現象(長期利回り<短期利回りの逆イールド)が起こる場合もあります。

個別の債券を購入する際には、その時点の利回り水準と今後の金利見通しを考慮し、「今買って適切か」を判断することが大切です。また、債券を中途売却する場合には購入後の金利変動によって売却益・損が発生する点も押さえておきましょう。利回りと価格の逆関係を理解していれば、「なぜ債券価格が動くのか」「今の債券利回りは割安か割高か」を考える指針になります。

米国債(アメリカ国債)のリスクと対策

最後に、米国債投資におけるリスク管理のポイントについてまとめます。米国債は安全性の高い資産ですが、前述したように市場環境や投資手法によっては様々なリスクに晒されます。初心者の方でも適切にリスクと向き合い、安全に運用するための対策を講じることが重要です。

米国債(アメリカ国債)の主なリスク要因

市場リスク(価格変動リスク)

債券価格が金利動向や景気・市場の状況に応じて変動するリスクです。特に金利変動リスクは債券投資最大のリスク要因であり、金利上昇時の価格下落による評価損がこれに当たります。また、マーケット全体の流動性低下や売り圧力によって一時的に価格が大きく動くこともあり得ます。

金利リスク

上記市場リスクの中核となるもので、金利の変化により債券の利回りや価格が変動するリスクです。債券は本質的に「将来の定額収入への投資」ですから、市場金利が変わると、その定額収入の価値評価が変わります。特に長期債ほど金利リスクに敏感であり、長期金利のわずかな変化でも価格への影響が大きくなります。逆に短期債は頻繁に満期が訪れて再投資されるため、金利変化による影響は限定的です。このリスクは債券投資に避けて通れないものですが、後述の対策によってある程度管理が可能です。

為替リスク(通貨リスク)

日本から米国債に投資する場合、ドルと円の為替レート変動がリターンに直結するリスク要因となります。円高ドル安が進めば円換算リターンが減少し、円安ドル高になればリターンが増加します。為替相場は金利差や経済指標、投資家心理など様々な要因で動くため予測は難しく、国内投資にはない追加の不確実性となります。特に債券利回りが小さい場合、少しの円高で利益が吹き飛んでしまうケースもあるため注意が必要です。

信用リスク

米国債自体の信用リスクは極めて低いですが、ゼロではありません。発行主体である米国の財政状況や政治情勢によっては、わずかながら債務不履行のリスクが意識される場面もあります。また、米国債と似たような感覚で投資できる商品として米国社債(米国企業の債券)や他国の国債がありますが、これらは発行体によって信用リスクが大きく異なります。投資対象を広げる際には、各債券の信用格付けや財務状況にも目を配る必要があります。

米国債(アメリカ国債)のリスクへの主な対策

満期まで保有する計画を立てる

金利変動による価格下落リスクは、債券を満期まで保有することで実現損失を回避できます。途中で売却しない限り額面金額で償還されるため、評価額が一時的に下がっても元本と利息は契約通り受け取れます。したがって「この資金は〇年間は使わない」と決めて、満期まで持ち切るつもりで投資すれば、金利リスクによる元本割れを心配せずに済みます。ただし為替変動による円換算での影響は残るため、満期保有戦略と合わせて為替対策も検討しましょう。

投資期間を分散する(債券の梯子運用)

一度に一つの債券に全額を投じるのではなく、複数の債券に投資時期や満期を分散させることで金利変動リスクを平準化できます。例えば満期の異なる債券を階段状に保有する「債券のはしご(ラダー)戦略」を用いれば、定期的に債券が償還され再投資の機会が生まれるため、金利環境の変化に柔軟に対応可能です。これにより、常にポートフォリオの一部は最新の金利水準を反映する形になり、極端な金利変動による影響を和らげることができます。

為替ヘッジを活用・検討する

為替リスクに対しては、為替ヘッジという手段があります。為替ヘッジ付きの投資信託やETFを利用すれば、為替変動の影響を抑えつつ米国債に投資することが可能です。実際、東証上場の米国債ETFには円ヘッジ版が用意されているものもあります。また、自分で為替予約(フォワード)を締結してヘッジする方法もありますが、初心者には難易度が高いため、ヘッジ付きの商品を選ぶのが簡便です。為替ヘッジにはコスト(ヘッジコスト)がかかる点と、円安による為替差益も得られなくなる点に留意しつつ、為替変動が不安な場合はヘッジ利用を検討しましょう。

ポートフォリオ全体で分散投資を図る

米国債だけに集中投資せず、他の資産クラスとも組み合わせて分散投資することがリスク管理の基本です。たとえば株式や国内債券、現金などとバランスを取り、米国債の比率を適切な範囲に収めます。こうすることで、仮に米国債部分で為替損や金利損が出ても、他の資産の値上がりや利息収入で補える可能性が高まります。特に、日本に偏った資産構成だと国内景気や政策変更の影響を強く受けますが、米国債を組み込むことで国際分散が効き、リスクの偏りが緩和されます。逆に米国債に偏りすぎると、為替リスクや米国経済への依存が大きくなるため注意が必要です。

定期的な見直しと専門家の活用

債券市場や為替相場の状況は時間とともに変化します。投資初心者であっても定期的にポートフォリオを見直し、必要に応じてリバランス(資産配分の調整)を行う習慣を持ちましょう。金利環境の変化やライフイベントによる資金需要の変化などに合わせて、債券の種類や投資額を調整することが大切です。判断に迷う場合は、証券会社のコンサルタントやファイナンシャルプランナーなど専門家のアドバイスを仰ぐのも有効です。最新の市場情報や見通しを踏まえて助言を受けることで、リスクに対する備えを強化できます。

ポートフォリオに米国債を組み込む際のポイント

米国債を資産ポートフォリオの一部に加える場合、いくつか意識しておきたいポイントがあります。まず、自身の投資目的や時間軸に照らして適切な配分比率を決めましょう。安全資産と位置付けて老後資金の安定運用に用いるなら比率を高めに、一方で成長を狙う投資の中でリスク緩和目的で持つなら比率は控えめにする、といったイメージです。次に、米国債の種類の選択も重要です。長期債は高利回りですが価格変動が大きいので、ポートフォリオ全体のリスク許容度に応じて割合を調整します。一般に、株式などリスク資産との組み合わせでは、中期~短期債中心のほうがポートフォリオ全体のボラティリティを抑えやすいです。さらに、為替エクスポージャーの管理も欠かせません。全てドル建て資産にしてしまうと円高時にポートフォリオ全体が打撃を受けるため、必要に応じて為替ヘッジ債券や円建て資産も組み合わせ、適度に円資産と外貨資産を織り交ぜます。

最後に、経済・金利動向のウォッチを続けることです。米国の金融政策や経済指標は米国債の利回りに直結するため、定期的にニュースをチェックし、大きな環境変化があればポートフォリオ戦略を見直す柔軟性を持ちましょう。

まとめ

初心者の方向けに米国債(米国国債)の基礎からリスク・メリット、具体的な投資方法までを解説しました。

米国債はその高い安全性から「資産運用の土台」として有用な一方、為替リスクや金利変動といった注意点も抱えています。重要なのは、それらメリット・デメリットを正しく理解し、自分の資産運用方針に沿って活用することです。リスク管理をしっかり行えば、米国債投資は初心者にとっても有力な選択肢となり得ます。

ぜひ本記事の内容を参考に、安心・着実な資産形成の一助として米国債を検討してみてください。

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