個人向け国債とは?メリット・デメリットから購入方法、金利の仕組みまで総合解説

投資に興味はあるものの、「リスクが怖い」「資産を減らしたくない」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。そんな投資初心者に向いているのが、日本政府が発行する**「個人向け国債」**です。元本保証があり、銀行預金よりも有利な金利を得られることから、安全な資産運用の選択肢として注目されています。しかし、実際に調べてみると「やめとけ」という意見を目にすることもあり、どのような商品なのか判断に迷う方もいるでしょう。本記事では、個人向け国債の基本的な仕組みやメリット・デメリット、利回り、購入方法、リスク、税金の仕組みについて、初心者にもわかりやすく解説します。投資経験がなくても理解しやすいように、シンプルな言葉で構成しましたので、これからの資産運用の参考にしてください。個人向け国債が本当に自分に合った投資なのか、じっくり見極めていきましょう。

個人向け国債とは?基本的な仕組みと種類の説明

個人向け国債とは、日本国政府が個人投資家向けに発行する国債(債券)です。簡単に言えば、国にお金を一定期間貸し付ける代わりに利息を受け取り、満期(償還時)に元本が戻ってくる仕組みになっています。発行主体は日本政府であり、利子と元本の支払いを国が保証するため、安全性が極めて高い金融商品です。個人向け国債は2003年(平成15年)に導入され、現在では**「変動10年」「固定5年」「固定3年」の3種類が発行されています。いずれも利子は半年ごと(年2回)**に支払われます。

変動金利型10年満期(変動10年)

変動10年は満期10年で、半年ごとに適用金利が見直される変動金利型の国債です。市場金利の動向に応じて利率が変動するため、発行後に金利水準が上昇すれば利息も増える一方、金利低下局面では受取利息も下がります。利率の設定方法は基準金利(直近の10年物利付国債の入札結果に基づく利回り)に0.66を乗じたものと定められており、この計算で求められた利率が半年ごとに適用されます。また、後述するように年0.05%の最低金利が保証されているため、市場金利が極めて低い場合でも利率がゼロやマイナスにはなりません 。

固定金利型5年満期(固定5年)

固定5年は満期5年で、発行時に決定した利率が満期まで変わらない固定金利型の国債です。購入時点で満期までの利率(年率)が確定するため、将来の金利変動にかかわらず計画的に資産運用しやすいという特徴があります。利率は市場金利を参考に決定され、基準金利(発行前の市場実勢から算出した想定5年利回り)から0.05%差し引いたものが適用されます 。一般に、同時期発行の「固定5年」は「固定3年」よりやや高い利率に設定される傾向があります(市場状況によって異なります)。利子は半年ごとに支払われ、満期5年で元本が返還されます。

固定金利型3年満期(固定3年)

固定3年は満期3年で、利率が発行時から満期まで固定されている短期の固定金利型国債です。基本的な仕組みは固定5年と同様で、購入時に満期まで適用される年利が決まります。利率は市場実勢に基づく想定3年利回りから0.03%差し引いた水準で設定されます。運用期間が比較的短いため、将来の金利変動をあまり長期にわたって気にせずに運用できる点が特徴です。ただし一般的に固定3年は他のタイプより利率が低めに設定される傾向があります 。

個人向け国債の安全性と元本保証

いずれの個人向け国債も元本保証があり、額面金額での償還が約束されています。満期まで保有すれば、国が元本100%を返済します。途中で売却(換金)する場合でも後述のルールに従い元本割れしない点が大きな特徴です。個人向け国債は証券会社や銀行で管理されるペーパーレス商品であり、実物の券面発行はありません。万一購入した金融機関が破綻した場合でも、預金とは異なり国債そのものは別途管理されているため元本と利子は保全されます(国が債務者である以上、金融機関ではなく国に返済義務があります)。

「個人向け国債はやめとけ」と言われるのはなぜ?理由を知って正しく活用しよう

個人向け国債は安全な資産運用手段として人気がありますが、一方で「買うのはやめとけ」といった否定的な意見もしばしば耳にします。投資未経験者にとって不安に感じるこれら否定的な声の主な理由を見てみましょう。

個人向け国債が「やめとけ」と言われる主な理由は以下3つに集約されます

  • 低利回り(インフレに弱い)
  • 流動性の低さ(自由に現金化しづらい)
  • キャンペーン営業のきっかけとされやすい

しかし、こうしたデメリットは裏を返せば後述する安全性の高さと表裏一体でもあります。

1. 利回りが低くリターンが乏しいため

個人向け国債はリスクが低い反面、得られるリターンも控えめです。他の金融商品、特に株式や投資信託などと比べるとリターンが小さいため、お金を「寝かせている」ように見えるという指摘があります)。実際、株式投資では年5%超の利益を狙える可能性もありますが、個人向け国債の利回りは長らく1%未満に留まってきました。例えば2024年5月時点で個人向け国債の想定利回りは約1%程度であり、一方その頃の物価上昇率(インフレ率)は前年同月比+2.8%に達していました 。このようにインフレに追いつかない低利率では実質的な資産価値が目減りしてしまうため、「大して増えないからやめておけ」という否定的な声につながっています。

2. 機動性に欠け、すぐ現金化できないため

個人向け国債は原則として購入から1年間は中途換金(解約)できません。そのため、急に資金が必要になった場合でも株式のようにすぐ売却して現金化することができず、不便だと感じられます。1年経過後は途中換金が可能ですが、解約手続きは購入した金融機関の窓口(銀行・郵便局・証券会社等)で所定の手続きを行う必要があり、ネット上ですぐ売買できる商品と比べると換金の手間がかかる点も敬遠される理由です。「流動性が低く、必要なときに引き出せない」「手間の割にリターンが少ない」といった理由でやめておけという意見が出ています。

3. 魅力的なキャンペーンの裏で営業を受ける可能性

金融機関によっては個人向け国債の販売時に「○○円購入ごとに景品進呈」などキャンペーンを行うことがあります。これ自体は悪いことではありませんが、キャンペーン目当てで購入すると、その後に金融機関から他の金融商品の勧誘を受けるケースがあると指摘されています。過去に「国債を買ったらしつこく投資信託の営業電話が来た」といった経験談もあり、そうした営業を煩わしく感じる人が「やめとけ」と忠告する場合もあります。もちろん必要ない商品は断ればよいのですが、営業を受けること自体が面倒だと思う向きもあるようです。

個人向け国債のメリット・デメリット

個人向け国債には否定的な意見もありますが、一概に悪い商品というわけではありません。メリットとデメリットを正しく理解し、自身の資産運用目的に照らして適否を判断することが大切です。

個人向け国債の主なメリット

個人向け国債は非常に安全性が高く、元本割れしにくい上に、金利変動にも対応できるように設計されています。特にメリットは以下の5点です。

  • 高い安全性と信用性
  • 元本割れしない設計
  • 銀行預金より有利な利率
  • 金利上昇局面で利息も増える(変動10年)
  • 小口から購入でき手数料も無料

以下で詳しく説明します。

高い安全性と信用性

個人向け国債の最大のメリットはなんといっても安全性の高さです。日本国が債務者となり、利子と元本の支払いを責任もって行うため、信用リスク(デフォルトリスク)は極めて低い金融商品と言えます。銀行預金と同様に元本が保証され、預金保険の適用上限(いわゆるペイオフ限度額)以上の大口資金の受け皿としても注目されています。また、基準金利がどれほど低下しても最低年0.05%の利率が保障されているため、利息がゼロになってしまう心配もありません。

元本割れしない設計

個人向け国債は市場で売買されず、発行後一定期間経過後は額面金額で発行者(国)が買い取る仕組みが用意されています。そのため、市場金利の変動によって一般の債券のように価格が上下して損失が出ることがなく、途中換金しても元本割れしません。例えば、市場金利が上昇局面でも個人向け国債は価格が下落せず額面で換金できるため、金利変動による資産の目減りリスクを避けられます 。これは債券投資における安心感につながるメリットです。

銀行預金より有利な利率

超低金利時代が長く続いた日本において、個人向け国債の利率は通常の銀行預金(金利)よりやや高めに設定されてきました。特に最近では市場金利の上昇に伴い、個人向け国債の利率も上がっています。2024年12月募集分の適用利率は「固定3年:年0.60%」「固定5年:年0.71%」「変動10年:年0.71%」となっており、メガバンクの普通預金金利(年0.10%前後)や定期預金金利(例:大手銀行3年定期で年0.2%程度)より明らかに高い水準でした。このように預金より有利な金利を元本保証で受け取れる点は、大きな魅力です。

金利上昇局面で利息も増える(変動10年)

変動金利型10年満期のタイプでは、景気や政策によって市場金利が上昇した場合、半年ごとの見直しによって受け取れる利息が増える可能性があります。実際、2022年以降は日本でも長期金利が徐々に上昇傾向となり、それまで0.05%に張り付いていた個人向け国債の利率も上向いてきました。将来インフレや金利上昇が続く局面では、変動10年を保有していると後から発行された債券に乗り換えなくても自動的に利息が増えていくメリットがあります。

小口から購入でき手数料も無料

個人向け国債は最低1万円から1万円単位という少額で購入可能です。まとまった資金がなくても始めやすく、投資初心者にとってハードルが低い商品です 。さらに、購入時・保有中・換金時のいずれにも手数料がかからないのもメリットの一つです 。一般的な投資信託などでは購入手数料や信託報酬等のコストが発生しますが、個人向け国債ではそうしたコスト負担がありません。余計な手数料なしに満期まで安心して保有し続けられる点は、シンプルで分かりやすい利点と言えるでしょう。

以上のように、個人向け国債は**「安全・確実に増やしたい」「銀行預金より少しでも有利に運用したい」**というニーズにマッチした商品です。リスクを抑えて手堅く資産を運用したい人にとって、有力な選択肢の一つとなっています。

個人向け国債の主なデメリット

個人向け国債は安定性が非常に高い反面、利回りは株式等と比較して低く、また流動性にも制約があります。

  • 高い利回りは期待できない
  • 流動性が低く途中換金に制約がある
  • 他の投資手段との比較で機会損失があり得る

高い利回りは期待できない

リスクが低い分、利回り(リターン)の低さは避けられません。個人向け国債の金利水準は抑えめで、大きな利益を上げることは難しいです。例えば2023年4月募集分の利率は「変動10年:年0.30%」「固定5年:年0.14%」といずれも1%未満でした。株式や投資信託などリスク資産と比較するとリターンが見劣りするため、積極的に資産を増やしたい人には物足りないでしょう。また、インフレに弱い点もデメリットです。受け取る利息が物価上昇率に追いつかないと、たとえ元本が減らなくても実質的な購買力は低下してしまいます。高インフレ局面では個人向け国債の実質利回りがマイナスになるリスクもあり得ます。

流動性が低く途中換金に制約がある

個人向け国債は購入から1年間は原則として中途換金(売却)できない決まりがあります。そのため、緊急で現金が必要になっても最低1年は資金を拘束される点に注意が必要です。1年経過後は国に買取請求する形で換金可能ですが、その際直前2回分の利息(税引前)の0.79685倍相当額が差し引かれます。これは約直近1年分の利子の8割程度にあたり、途中解約するとその分の利息を失う仕組みです。したがって、満期前に解約すると得られる利息が減ってしまい元本も大きく増やせない結果となります。流動性に制約がある以上、個人向け国債への投資は基本的に満期まで保有する前提で考えるのが賢明です。

他の投資手段との比較で機会損失があり得る

固定金利型の場合、購入後に市場金利が上昇しても利率は据え置かれるため、より高金利の新商品に乗り換えたいという場合に機会損失が生じます。他の金融商品では売却して乗り換えることで対応できますが、個人向け国債は前述のとおり売却に制限があるため俊敏な乗り換えができません。また、個人向け国債そのものはNISAなど税制優遇の対象外であり、利子収入には課税が避けられます(詳細は後述)。このため、同じ安全資産でも利子が非課税になる制度を利用できる預貯金(例えばマル優※)や、個人向け国債を組み込んだ投資信託などと比べると、税制面で不利になるケースもあります。※マル優: 少額貯蓄非課税制度(一定要件を満たす場合に適用可能な非課税貯蓄制度)。

以上が主なデメリットです。まとめると、個人向け国債は「ハイリターンは望めないがローリスク」「流動性・柔軟性に欠ける代わりに満期まで確実に運用できる」といった特徴を持ちます。これらメリット・デメリットを踏まえ、自分の資産運用の目的や期間に合っているか検討するとよいでしょう。

個人向け国債はどこで買える?購入方法の説明

個人向け国債は、銀行や証券会社をはじめ多くの金融機関で取り扱われています。都市銀行・地方銀行、ゆうちょ銀行、信用金庫、証券会社(対面・ネット証券)など幅広い窓口で購入可能です。店頭窓口だけでなく、インターネットバンキングや証券会社のオンラインサービスから申し込めるケースも増えています。基本的に「債券」を扱っている金融機関であれば個人向け国債の購入手続きが可能と言えるでしょう。

個人向け国債購入の流れ

個人向け国債を購入するには、まず取り扱い金融機関で債券購入用の口座を開設します。証券会社の場合は証券総合口座、銀行の場合は国債等の保護預り口座(または債券専用口座)を作成する形です。初めて国債を購入する際には本人確認書類や印鑑などが必要になる点は銀行預金口座開設と似ています。口座開設後、財務省が定める募集期間内に購入の申込みを行います。個人向け国債は現在毎月発行されており(年12回発行)、各回ごとに募集期間が設けられています。募集期間中に申し込めば発行日に購入が成立し、その後は半年毎に利払いを受けることになります 。

購入申込は、窓口提出の申込書やインターネット上の申込フォームから行います。購入額は1万円以上1万円単位で指定します。購入時に手数料は一切かからず、申し込みが成立すれば発行日に指定口座から購入代金が引き落とされ、国債が口座に割り当て(入庫)されます。購入後は半年ごとに利子が自動入金され、満期日または中途換金時に元本が払い戻されます。

個人向け国債購入のタイミングと留意点

個人向け国債は毎月発行されるため、基本的にいつでも購入の機会があります。各月で利率が異なる場合があるため、直近の金利水準を確認して購入タイミングを判断するとよいでしょう。固定金利型(3年・5年)は発行ごとに利率が決まるため、市場金利が上昇局面にあるときは発行月を遅らせたほうが高い利率が得られる可能性があります 。変動10年については将来利率が上がる余地がありますが、購入時点の初回適用利率も一定期間続くため、その時点の金利水準が全く無関係ではありません。

なお、**個人向け国債はNISA口座での購入はできません(**後述するように利子は課税されます)。通常は証券会社の特定口座(または一般口座)や銀行の債券口座での保有となります。また、中途換金する場合も購入した金融機関で手続きを行うことになるため、購入した金融機関を変更することはできません。途中で預け先(管理口座)を移管する手続きも可能ですが、手間がかかるため基本的には最初に購入する金融機関で満期まで管理する前提で選ぶと良いでしょう。

個人向け国債の利回りはどう決まる?

個人向け国債の**利回り(利率)**はどのように決まるのか、過去の推移や他の資産との比較も含めて解説します。

利率の仕組みと最低保証

前述のように、個人向け国債には3種類それぞれに利率の決定方法が定められています。固定3年固定5年は発行時に適用される固定金利が決まり、これは市場金利を基にわずかなマイナス調整をした利率になっています。具体的には、固定5年は基準金利から0.05%差し引いた利率、固定3年は基準金利から0.03%差し引いた利率が適用されます。一方、変動10年は半年ごとに利率が見直される変動金利型で、各利払い期間に適用される利率は直近の10年物国債利回り(基準金利)×0.66で算出されます。これらの計算式によって、それぞれの発行回における適用利率(クーポン)が決まります。

いずれのタイプも年0.05%(税引前)の最低金利保証が設けられている点が重要です。市場環境によって計算上の利率が0%を下回るような場合でも、実際に適用される利率は最低でも0.05%となります。日本銀行のマイナス金利政策下では市場金利が非常に低くなり、通常であれば債券の利率がゼロ近辺となる可能性がありました。しかし、個人向け国債ではこの最低保証のおかげで利息がゼロにならない安心感があります 。なお、0.05%という利率はごく小さい数字ですが、銀行の普通預金金利(0.001%程度だった時期もあります)と比べれば遥かに高い値です。超低金利期には「ほとんど利息は付かないが、最低限0.05%はもらえる預金のようなもの」として認識されていました。

過去の利回りの推移

個人向け国債は2000年代以降の長期にわたる低金利環境の中で運用されてきました。そのため、過去の利回りは最低保証の0.05%が適用されるケースが非常に多く、特に2010年代はほぼすべての発行回で利率0.05%が続いていました。日本銀行が長期金利を0%近辺に抑える政策(いわゆる長短金利操作)を行っていた影響で、新発10年国債の利回りも0%~0.1%程度にとどまり、結果として個人向け国債(変動10年)の利率も最低ラインに張り付いていたのです。

しかし、2022年頃から金利情勢に変化が見られました。世界的なインフレとそれに伴う各国の利上げの流れを受け、日本の長期金利も次第に上昇傾向となりました)。日本政府は依然低金利政策を維持していますが、それでも2023年には新発10年国債利回りが0.5%前後まで上昇する場面があり、個人向け国債の利率にも変化が出始めました。実際、2023年春の募集分では変動10年が0.30%、固定5年が0.14%というように、久々に最低0.05%を上回る利率が提示されています。さらに長期金利の上昇が進んだ2024年には、個人向け国債の利率も大幅に上がりました。冒頭で触れたとおり**2024年12月募集分の利率は固定3年0.60%、固定5年0.71%、変動10年0.71%**と、1年前と比べて倍以上の水準となっています。このように、市場金利が変動すれば個人向け国債の利率も発行回ごとに見直されていきます。過去長らく低空飛行だった利率は、足元では上向き傾向にありますが、将来の経済環境によって再び低下する可能性もあります。

他の資産との利回り比較

個人向け国債の購入を検討される方が特に比較しやすい、預金と、株式や投資信託に資産を入れた場合と個人向け国債の場合の比較を説明します。

預金と個人向け国債の利回り比較

個人向け国債は、元本が保証されている安全資産という意味で預金と性質が似ています。違いは利息(利回り)水準で、一般に個人向け国債の方が預金より高めの利率に設定されています。例えば、メガバンクの普通預金金利が年0.001~0.1%程度、定期預金でも年0.2~0.4%程度だった時期に、個人向け国債は最低0.05%が保証され、状況次第では0.1~0.5%台の利率が付いていました。最近では前述のように個人向け国債の利率が0.6~0.7%に達し、メガバンクどころかネット銀行の高金利定期預金(年0.5%前後)より高い水準となっています。したがって、安全性を重視しつつも銀行預金よりは有利な利回りを得たいという場合、個人向け国債は魅力的な選択肢となります。

株式・投資信託と個人向け国債の利回り比較

株式や株式型の投資信託(ファンド)は価格変動リスクがあるものの、中長期的な期待リターンは個人向け国債より高いとされています。平均的な株式の期待収益率は年数%以上とも言われますが、それには元本割れリスクが伴います。一方、個人向け国債の利回りは直近でも1%前後であり、株式の期待値と比べれば小さいものの安定して確実に得られる利回りです。極端に言えば「ハイリスク・ハイリターン」か「ローリスク・ローリターン」かの違いであり、自分のリスク許容度次第でどちらが適切かは異なります。初心者でまず損をせず運用したいという場合、個人向け国債の利回りは控えめでも十分と考えられますし、逆にインフレ時代に資産を大きく増やしたいなら物足りないでしょう。このように、個人向け国債の利回りの評価は他の資産と比較したリスク・リターンのバランスで決まってきます。

個人向け国債に関連するリスク

個人向け国債は安全性が高い商品ですが、投資である以上いくつかのリスク要因も持ち合わせています。主なリスクとしてインフレリスク・金利変動リスク・流動性リスクが挙げられます。それぞれ確認しましょう。

インフレリスク(購買力リスク)

インフレリスクとは、物価が上昇することでお金の実質的な価値(購買力)が低下してしまうリスクです。個人向け国債は元本が返ってくるとはいえ、受け取る利子が低い場合にはインフレによって資産の実質価値が目減りする可能性があります。たとえば年1%の利息を得られる債券でも、物価がそれ以上に上がっていれば資産は実質的には目減りします。日本は長年デフレ~低インフレ状態が続いていましたが、近年は物価上昇がみられる場面もあります。インフレ率が個人向け国債の利率を上回る局面では、実質利回りがマイナス(元本は減らないが資産の購買力は減る)になる点に注意が必要です。このリスクに対処するには、物価連動国債などインフレ対応型の商品を活用するか、個人向け国債だけでなく株式や不動産など実物資産にも分散投資しておくといった方法が考えられます。

金利変動リスク

金利変動リスクとは、市場金利の変化によって債券の価値や利息に影響が及ぶリスクです。個人向け国債の場合、変動金利型10年は市場金利の動向によって将来受け取る利息が増減するため、金利低下局面では利息収入が減るリスクがあります。一方で固定金利型3年・5年は利率自体は変わりませんが、市場金利が上昇すると既発債の利率が見劣りする状況になります。通常の債券であれば、市場金利の上昇局面では価格が下落(利回りが市場水準に調整)しますが、個人向け国債は途中換金でも額面金額で国が買い取るため価格下落という形での損失は発生しません。これは投資家保護の仕組みですが、その代わり市場金利が上がっても保有中の債券の利率は上がらず、他の高金利商品への乗り換えにも制約があるため機会損失のリスクが生じます。つまり、金利が上昇した状況下では個人向け国債を満期まで持つことで安全は確保できますが、より有利な利回りを得るチャンスを逃す可能性があるということです。

まとめると、個人向け国債は金利変動による元本価格の変動リスクは抑えられている一方、金利水準に応じた利息収入や機会費用のリスクが存在します。金利動向を常に注視しつつ、必要に応じて満期まで保有せず途中換金して他の商品に移るといった柔軟性も検討しましょう。

流動性リスク

流動性リスクとは、資金が必要になったときにすぐ現金化できないリスクです。個人向け国債は原則として発行から1年未満は中途換金できないため、急な出費や資金ニーズに対応しづらい場合があります。特に購入後1年以内に解約することは基本的にできない(例外は死亡時や災害時)ため、その期間は預金のように自由に引き出せる資金とはみなせません。1年経過後はいつでも換金可能ですが、換金の際は直近利息の一部差し引きというペナルティが課されます。このため、仮に市場金利が大きく上昇したからといって気軽に乗り換えをすることも難しく、計画通りに満期まで保有できないと感じた場合には流動性の高い他の手段に資金を置いておいた方がよかった、ということにもなりかねません。以上のように、個人向け国債は流動性リスクをある程度許容できる「使う予定のない余裕資金」で運用することが重要です。

信用リスク(発行体リスク)

一般的な債券には発行体の財務破綻による信用リスク(デフォルトリスク)がありますが、個人向け国債の場合このリスクは極めて低いと考えられます。日本国債の信用は日本政府の信用そのものであり、日本政府が債務不履行(デフォルト)に陥らない限り元本と利子は支払われます。日本政府は自国通貨建てで債務を負っているため、最悪の場合は通貨を発行してでも返済が可能であり、実質的に破綻の可能性は非常に小さいとされています。そのため、個人向け国債の信用リスクは無視できるレベルですが、絶対にゼロとは言い切れない点は念のため認識しておきましょう(国家財政が極度に悪化した場合にはインフレや増税等の形で間接的な負担を強いられる可能性はあります)。

個人向け国債にかかる税金

最後に、個人向け国債の税金について押さえておきます。債券の利子には税金がかかりますが、個人向け国債も例外ではありません。

利子所得の課税

個人向け国債の利子は受け取り時に**20.315%(所得税15.315%+住民税5%)**の税金が源泉徴収されます。利子は「利子所得」として位置付けられ、原則として他の所得と分離して課税されます(申告分離課税または源泉分離課税の扱い)。実際には受取時に自動的に税引きが行われるため、投資家が自分で納税手続きをする必要は基本的にありません。例えば、個人向け国債の利払い日に1,000円の利息を受け取る場合、自動的に203円程度の税金が差し引かれ、手取り約797円が口座に入金されます。元本そのものの償還(返済)には税金はかかりません。したがって、個人向け国債を満期まで保有した場合、投資家が受け取るのは「非課税の元本返済100%」+「利子(税引き後80%弱)」ということになります。

個人向け国債に確定申告は必要?特定口座なら不要!

個人向け国債の利子については、通常確定申告は不要です 。銀行や証券会社の口座(特に特定口座・源泉徴収あり)で受け取る利子はすべて源泉徴収で完結するため、他に所得がなければ確定申告をする必要はありません。多くの個人投資家にとっては利子は自動的に税引き処理されるため、手続き上の煩わしさはないでしょう。ただし、場合によってはあえて確定申告をする選択肢もあります。例えば、他の金融商品(公社債投資信託など)で譲渡損失が出ている場合、確定申告を行い上場株式等の配当等と損益通算をすることで課税された利子の一部を取り戻せる可能性があります 。また、特定口座を利用していない場合や、多額の利子所得がある場合には申告分離課税として確定申告することも可能です。基本的には**「源泉徴収あり特定口座」**で運用すれば税金面の手続きは完結しますが、自分の投資状況に応じて確定申告するか否か選択できるということも頭に入れておきましょう。

その他の税務上のポイント

個人向け国債の利子は上場株式等の配当等と同じ区分に属するため、他の上場株式等の譲渡損失と損益通算が可能です)。一方、個人向け国債そのものはNISA(少額投資非課税制度)の対象外となっており、NISA口座で購入して利子非課税にするといったことはできません。税金面では預貯金の利子とほぼ同様の扱いと考えて差し支えありません。なお、過去に国債の利子に対する非課税制度(マル優など)を利用できるケースも一部ありましたが、現在一般的なケースでは個人向け国債の利息は一律20.315%課税と認識しておけば良いでしょう。

まとめ

個人向け国債は、安全性が高く、元本保証がある金融商品として、投資初心者でも安心して始められる資産運用の選択肢の一つです。特に、銀行預金よりも少しでも有利な利回りを得たい方や、確実に資産を守りながら運用したい方には適しています。一方で、利回りが低いことや、途中換金に制約があることなど、デメリットも理解したうえで選択することが重要です。本記事で解説したメリット・デメリット、リスクや税金の仕組みを踏まえ、自身の投資目的や資産状況に合った運用を検討しましょう。個人向け国債は、長期的な安定運用を求める方にとって、資産の一部を預ける先として有力な選択肢になります。金融商品を比較検討しながら、賢い資産運用を進めていきましょう。

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